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光の射す方へ




時刻は3時となっていた。


すまんす、鍵が閉まってて等と遅くなった言い訳をして、

めろんちゃんの荷物はテントの入口シートのすぐ内側にあったので
渡すことができたけれど、ひだっちのは完全にテントの中だったので、お渡し出来ず。





いやいや、すまんす。テントが鍵閉まっててさ。






荷物が取れないっす。







え? みたいな顔のひだっちでしたが。いやいや、こっちもショックオブ稲妻だがす。

っていうか、寝どこが無いし。いつ帰ってくるか不明だし。






ほんで、村さんこれからどうするの? とヨシダ。






いや、やることが無いから、












くらくんと二人でかっぱナイトの続きを。






まだ、飲むんすか??




だって、鍵閉まってるもん。




俺らは、お土産物屋のなかで夜を明かします。


修行僧の方々とはここでお別れです。






じゃ、酒でも買いますか。ビールも飽きたし、僕は芋焼酎の水割りを、くらくんはサワ―カクテル。




つまみとして、豚肉の炭火焼を買い、シャトルバスが降り立つ場所の近く、


濡れた軒下で我々はカッパを着ながら腰を下ろし、
酒を飲み、肉を口に入れた。








いやー、寒いっすね……。



いつなったら、テント入れるんすかね……。






身体の芯から冷えるね!!!
 とか笑っていたけど、

何だか笑えなくなってきた。





だって、お互いの顔がひきつっているもん。





水割りは雨水でさらに薄まり、時間はなかなか過ぎ去ろうとはしなかった。



そろそろ、ここで飲んでいても、何も進展しないから、風呂とか入ってみたくないっすか?




下着はどうするんすか? 売店で売ってるんちゃうかな、とか何とかで、




土産物屋へ。カッパコンビは一路目指す。






リストバンド交換所から少し歩いたところに、その土産物屋はあった。地方に良くある大きな店だった。


ロッジ風の建物の外、軒先では
死臭漂う修行僧たち
が、ごろんごろん転がっていた。




身動きひとつしない人ばかり。




フジロッカーはとにかくどこでも寝ますねえ。石油タンクの”危険”って書いているとこの真下とか、

フィールドオブヘブンへと続くボードウォークの狭間とかですね、

何でもない藪の中とかとか。




寝てるんか倒れてるんか区別つきませんが。






土産物屋のなかに入ると、くらくん曰く「うわ、野戦病院みたい」な場所で、


そこらじゅうで、人々が横たわってぐったりしていました。


末期カッパナイト並みのマイナスオーラが出ています。





















さて、僕らがここに来た理由は、下着やタオルを求めてです。



果たして、土産物屋にタオルや下着があるのか!!!





あるんですねえ。あるます。

一般販売価格の3倍ぐらいの値段
で・・・・・・。





我々カッパコンビは迷いました。目を合わせて、首をひねりました。これは高すぎる。




でも、風呂に入りたい。一歩でも物事を先に進めたい。というわけで、購入。







で、どこの風呂入るの??






分からん……。とりあえず、外に出よう。カッパコンビは土産物屋という名を装った収容所を脱走。






選択肢





1 フジロックキャンプサイト名物








ドイツのガス室風シャワーです。



ちなみに、キャンプよろず相談の人に



「そもそも、お湯は出るんすか?」と質問をすると、






「昨日までは水しか出なかった」
とさらりと答えられ、「今日はお湯が出るかも」とか励まされ。






「使った人に聞くのが一番ですよ!!」って、その案内間違ってりゃしませんか……。



2 苗場の湯

長蛇の列らしいけど、ちゃんとした温泉みたい。詳細不明。げむやぎ村長一派は

ここで風呂に入っていた模様。




3 一路別天地へ

フジロック会場を出て、周辺の宿を探し、風呂を見つけるという方法。

って、下調べをまったくしていないバカッパコンビ……。


行き当たりばったり突撃作戦も




膝が痛いため、どうにも踏み切れず。若さがない。というか、思考力が無いお。













もう、その辺でごろんと寝ますか……。みたいな退廃的な雰囲気になってきた。



やぎ電話は出んわ……。2000円カッパの守備力で何とか朝まで行けるだろうとか何とか。


二人とも真顔。




この現状を笑い話ふうにして、ひかりん(女の子 20歳)という名前の最近仲良くなったおあしすファンに

メールしたら、「大丈夫ですか?」ってすぐさま返信が来て、



「いや、まあくたばりかかっていますが」って送信したら、
「じゃあ、私の宿に来ませんか? ロビーとかになら、いても良いかも知れないです」








ええ? 良いんですか……。こんな薄汚れた瀕死のカッパ2名ですが。





優しいヒトだなあと、しみじみ。




っていうか、くらくんどうするよ? お言葉に甘える? と、村上。





開いてるか分からんテントに戻る気力もないしなあ。



っていうか、行き場所があるって良いよなとか笑った。



















いや、寒くてうまく笑えなかったが。





というわけで、ひかりんちゃんのところにお世話になることになりました。

チケット交換所から歩いて10分ぐらいの好立地にある、宿。


彼女は元有名レコードショップの店員で、その時の職場仲間とフジロックへ初参加。


だけど、僕らみたいに共通の音楽ファンではないから、見に行くバンドはまったくの
バラバラみたいです。



で、彼女に声をかけて昼間から僕らとつるんでいたのですが、
あの全国でもとりわけ濃いオウェイシスファンたち





果たして話とか合うんかな・・・・・・。ちょっと気がかりでしたが。


しかし、当人は楽しそうな様子だったので良かったです。
体調不良のディグアウト1号辺りと行動していたとか。




シャトルバスのバス停で待ち合わせをして、ほっそりとした彼女はふらりとやって来て、

「大丈夫ですか」と少し心配そうな表情を見せました。













いや……身体がしんどいというか、夜中の3時過ぎにテントの鍵が閉まっていた


精神的打撃が敗因
でした、




と既に敗戦の弁の村上。






しかも、村長電話出えへんもん。。。




「宿の人に訊いてみたら、
ロビーにいても良いみたいなので、一緒に行きましょう」と、彼女はうっすらと微笑み、僕らを案内した。





歩いて10分程度の宿のロビーは浅暗かった。僕らが来る前に座っているフジロッカーの男性
が二人いて、何やらごそごぞとお互いに言葉を交わしていた。
彼らとテーブルを挟むかたちで、僕らはソファに深く身を沈め、壁を見つめたり、水を飲んだりして
身体を休めていた。

会場から遠く離れているせいか、音が吸い込まれたかのように静かだった。
人の気配もほとんどしなかった。くたびれた靴が、玄関にたくさん並んでいた。
時々宿の従業員が光の零れる部屋を出たり入ったりしていた。


ひかりんはとても疲れているはずだったのに、自分の部屋に帰ろうとはせずに
明け方前の静けさに満ちたロビーで僕らと話をしていた。

オアシスのライブへと辿る僕の記憶は弱く、なかなかうまく言葉にすることが出来なかった。


でも、Live ForeverやMy Big Mouthのことを話した。動きにくい身体が疎ましかった。
言葉はなかなか僕の舌を離れようとはせず、うまく話すことができなかった。

やがて、見知らぬフジロッカーの男性二人はロビーを去っていった。
3人になった。
時刻は朝の五時ぐらい。長く、激しい一日が
間もなく昇る太陽の光によって終わりに向かっているような気がした。




僕は思ったより、自分の身体が疲労していることに気付いた。
ライブが終わってファンと騒ぐ。これはフジロックで今年オアシスの出演が決まった時に、
心の底から求めたものだった。雨が乱雑に降り続いていて、ひどい寒さだった。
キャンプサイトに帰って、明日の準備をし、身体を休めたほうが利口だというのは知っていた。

だけど、僕は利口になることを拒否した。そしてその代償として、けっこうなひどい体調となった。

僕はペットボトルの水で口を湿らせ、ソファから身を起こし立ち上がった。
自動販売機で冷たいブラックのコーヒーを買った。


ひかりんはリアムの位置、最前列で頑張って観ていたそうだった。
凄いなあ、と僕らは感嘆する。僕は通算20回以上のライブ経験でも最前列では観たことが無かった。

蓄積した疲労をあるラインで押し留めたような笑顔の彼女は、もう昨日のものとなった出来事を話す。
僕はコーヒーのプルタブを開け、ひと口飲み、聴き入った。

静けさばかりが目立っていたロビーは、次第に朝の真新しい光を外から取り入れていき、
明け方の淡い闇が少しずつ僕らの周りから失われていく。
6時から始まる朝風呂には、宿泊者じゃなくても入って良いらしかった。



朝の光が射し込み始めた時間、ひかりんにもう一度お礼を言う。
君がいなかったら、僕らは本当にどうなっていたんだろうねえ、冗談っぽく笑う。
本当にその辺りの外で寝ることになって、いっそうひどい状態になったかもしれない。


何だか元気になったみたいで良かったです、彼女は眠たそうな目を押さえながら、笑顔を返す。


「そろそろ、部屋に帰ると良いよ。僕らは適当に回復したら、ここを出るから」

結局、朝の6時過ぎまで彼女は一緒にいてくれた。
そして、自分の部屋に引き上げていった。




僕は記憶がずいぶんと揺れていた。長いはずだった一日、雨のせいで遅々として進もうとしない時間。
それは気がつくと、一瞬にして過ぎ去っていた。少しずつでも、段階を経てでもなくて、
一瞬にして、2009年の7月24日は終わっていた。





本当に色々な人に会った。近況を交わしたり、笑いあったり、酒を飲んだりした。
しかし、すべてが夢のなかでの出来事みたいに、ぬくもりを失っていた。



僕は目を細めて、左手首にはめている黄色の三日間通し券のリストバンドを見やった。


フジロックはまだ続く。

僕らは今日に向けて準備を始めるため、ソファから立ち上がった。