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モッシュピット突入



2009年7月24日17時。グリーンステージ右側奥、斜め四十五度から
なだらかな放物線を描くようにして、彼らはモッシュピットへと突撃した。
其々の持ち場へと散逸していく隊員たちの誰もが、これから予想される厳しい戦いを覚悟していた。

また、ステージの左側には、村長げむやぎ・アーチャー率いる





一個中隊が兵を展開していた。5人である。っていうか、ゲム派は村長のみ。
残りの隊員の動機は不明である。



彼の狙いは、さすらいの羊系ギタリスト、ゲム・アーチャー。

きゅいーん、きゅいいーん、きゅいーん。である。



スターリングラード戦線のごとく総力戦の気配が濃厚となった。

なるほど。















NEXTのNEXTのNEXTアップ


はオウェイシス!! である。






まだまだ先なんですが……。




苗場は執拗な雨が降っていた。
時々息を継ぐようにして、雨はやみ、そしてしばらくするとまた再開した。




17時ミッション開始だったのですが、僕はトイレを済ませるため少し遅れて到着。

遅れたと言っても、5分ぐらいなのですが。









既に突撃メンバー15人ぐらいが誰もいなかった

のには、驚きました。笑。
さすがっす。本気です。

とか思っていたら、北海道青年今日が二十歳の誕生日ひだっちを発見。


おお、待っててくれていたのか。本当に、他には誰もいません。


「え? みんな突撃したん?」と僕が訊くと、彼は静かに頷いた。


さすが、人生かかっとるなあと笑いながら、僕らもモッシュピットへ足を踏み入れた。








パティー・スミスのステージ、2001年ではトラヴィスだった。
ポールウェラーのポジションは、マニックストリートプリーチャーズ。


どうしても、あの日のあの時間と僕は比べてしまう。
期待とか、わくわく感とかいった言葉では収まりきらない
あの感情の昂り。僕は8年後に、また同じ場所に立っているのだ。



前方にひしめくオーディエンス。彼らの目線の先には、グリーンステージがあった。
ステージの左右には、巨大なオーロラビジョンが存在感を示し、
屹立と浮かび上がっている。


『SMASH GO ROUND』
『NEXT UP』という文字が流れ消えていく様を、敬虔な気持ちで眺めていた。
遠景は、山と木々の緑が美しく深まっている。空は暗い雨雲が落ち着き無く蠢き、
皮膚の下にまで染みわたる湿っぽい空気が流れ、嫌な雨が降っていた。


その雨は体温を少しずつ奪いながら、土を万遍なく泥に換えて穿つ。
だが、雨は少しずつ引いていっているように、見えた。



僕は、ここでひとつのカケに出ました。



膠着気味の戦局を打破する必要がありました。



















カッパ無し大作戦です。


作戦の内容は、こうです。


カッパを脱いで、最後まで戦う。え? 何でかって?




だって、俺のポンチョ、














腕が四十五度ぐらいまでしか上がらへんもん。。。



2000円なので、蒸れるし。なんか、暑いし。ってなことで、多少の雨ももろともせず、


じっと、濡れながらモッシュピットにいました。



しかし、事態は想像以上に困難を極めました。グリーンステージ、ポールウェラーのライブが始まったとき。





まさに、ゲリラ豪雨と化し、前列を確保していたため、見動きが取れず。



Tシャツはぐっしょりと濡れ、夜の山の雨は凍ったナイフのように鋭く、僕の体温を奪い去っていきました。


これはかなり危ない……。水中に放り込まれたみたいです。


ぶるぶると震えてきます。

目を細めながら、ふと、周りを見渡すとですね。






カッパを着てないのは、俺だけ……。



というストイックなリアルが、心を打ち砕き。
一時撤退を余儀なくされる。っていうか、死にそうでした。





が、ここでくたばるわけにはいかんのですよ!!





ポールウェラーのライブが終わりました。
後方に下がり、スペースを見つけて、例のポンチョを着る。
水だらけのTシャツを絞りましたが、既に身体が冷え切り、雨はますます降りやまず。


上からポンチョを着たものの、全身水浸しなので、あまり意味を成さず。


カッパ軍団ひしめくモッシュピット。そこかしこで、外人がオアシスの唄を歌っています。

ふと、見上げるとそこには、『NEXT UP OASIS』の文字が細かな粒子の映像として、
僕の目に届き始めていました。白く光り輝くオーロラヴィジョン。手を休め、僕はじっと注視しました。



モッシュピットはファンの人だかりと、深い影が落ち、ざわめきと喧噪が

そこらじゅうで継続していました。僕は一人でした。周りにはいつの間にか誰もいない。




彼らはいったい何を思って、今の時間を待っているのだろう。


僕の心は静けさに満ちていました。ステージの機材は、要領良く組み上がっていきました。

マイクや楽器のチェックが入り、その様子を黙って見つめていました。
まるで、異なる世界の造物でも眺めるように。




思えばこの8年間、何度オアシスのライブに行ったことだろう。
どれほどの人に会ったのか。言葉を交わしたファンは、無数で良く分かりません。
去来していく気持ちは、落ち着いたものばかりでした。