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「ノルウェイの森」

講談社




<DATA


1987年刊行、純文学としては異例の売上を誇り、村上春樹を流行作家の地位まで押し上げた作品。

「世界の中心で愛を叫ぶ」に破られるまで、十数年間セールスのトップ記録を保持していた。

果てしない喪失と再生の苦しみと恋愛がストーリーの核となっている。






純文学とエンターテイメントの区分けは近年不明瞭になってきているが、

大雑把にいって純文学とはリアリズムであり、間違っても”羊男”なんか出て来ない。

我々の生きている空間という縛りのなかで、現実を書くものが純文学と呼ばれている。


この作品は短編の「蛍」が下敷きとなっていて、さらに短編集「回転木馬のデッドヒート」

リアリズム文体を追求し、満を持して長編を書き上げた。


激しい性描写や死が物語を色濃くしている。タイトルの「ノルウェイの森」はビートルズの「ラバーソウル」

の2曲目「ノーウィジアン ウッド」から取ったと思われる。

レイコという女性がギターで「ミシェル」などアルバム収録曲を弾いているシーンが象徴的。


「ノルウェイの森」がタイトルだからと言って、舞台がノルウェイというわけでもなく、森でもない。


この作品はやがてノルウェイで刊行されることになり、親善大使だか現地の人だかに

「村上さん、これがノルウェイの森ですよ!!」とわざわざ案内されたそうだが、本人の感想は



































「ただの森ですね・・・・・・」ぽつりと一言。




村上はビートルズが好きなのか? しかし、ビートルズよりストーンズのほうが好きだったりする。





<感想


大学の二年生ぐらいのことだったと思う。

ぼくがこの小説に出会ったのは、「まあ、とにかく読んでみて」と女の子に言われたのがきっかけ。

それまで小説をまともに読んだことはなく、特にフィクションには興味を示さない性格だったのだが、

みるみるのめり込んでしまったのを記憶している。



その文章の美しさと、ほろ苦い余韻と共感を覚えてしまったことに自分でも驚いてしまった。


というわけで、思い出というかちょっと大きく言えば人生を変えてしまった一作。たぶん、これを読まなかったら

ぼくは小説を書こうとは思わなかっただろうなあ。(まあ、それはどうだっていいんだけど)







とにかくこの作品のおかげで文学への興味や探求が始まり、フッツジェラルドやレイモンドカーヴァー
等も読むようになった。










この物語は基本的に、はかなくて、悲しい話なのだが、ずっしりと伝わって来るものが多いと思う。


妙に心の芯をとらえられるというか、考えさせられる作品でもある。


が、あんまり暗いので現在ではそんなに好きではない。







それに、村上春樹の特徴であるユーモアのある奇妙な登場人物や突飛な展開が純文学では


活かすことができていない(そりゃ、できないだろうけど)ので。










恋愛小説というジャンルで留まっていたのなら、名作ではなかっただろう。


恋愛というマテリアルを通して、人間を描き切り、ぼくたちの周りに潜んでいる影のような悲しみが


バックグラウンドとして並んでいるから、素晴らしい作品となったのではないだろうか。



他人事の恋愛ではなく、小説を通して自分自身の内側につながってくる。心を揺り動かされる。




失うということに、その言葉ではかたちにならない感情に、人は共感してしまう。少なくともぼくはそうだった。








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