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代々木体育館 2002年9月28日ライブレポート 








ヘッドホンを取りはずす。耳は大音量にまだ機能を完全に回復せず、ぎんぎんと響いている。
「Wonderwall」が遠くの出来事のように、床に置いたヘッドホンから漏れる。

僕はトラックを飛ばし、「Champagne Supernova」を入れる。
波の音が次第に消えて、
ギターがリアムギャラガーの声と合わさるところで、再びヘッドホンを耳に当てる。

そしてライブレポートを書き始める。






「同じことを何度もやって、それにいったいなんの意味がある?」
とトムヨークはどこかの雑誌で語っていた。
「俺達の求めていたのは、期待していたのはこんな音楽じゃないよ」
とファンには言われるかも知れない。
今まで築き上げてきたものが音を立てて、
ビルディングの解体みたいに崩れる危険性もある。
しかし、それでもなおトムヨークは変化を求める。








それに対してオアシスは変化の少ないバンドだ。
ライブ手法も結成当時から変わっていない。歌うだけ歌って、さっさと帰ってしまう。
音楽的にも単純明快なロックンロールを貫徹している。
時代の50年先を行っているようなレディオヘッドに比べると、
昔ながらのスタイルを崩さないバンドだ。





オアシスは臆病なのだろうか。挑戦することをやめているのだろうか。
だから、いつまでも同じことを続けることにしがみついているのだろうか。
雑誌をぱらぱらとめくると、あるいはサイトを巡ると、こういう批判も確かにある。






このスタイルこそが彼らを最も表現できるかたちなのだと僕は思う。







「Champagne Supernova」すうっと流れていく。
リピートしているので、曲が終わったと思うとまたあの波のしぶきが始まっていく。


いつものライブが、そこでは始まる。
リアムギャラガーが手を後ろに組んで歌い、ノエルギャラガーがギターを弾く。






<代々木体育館>






大阪から乗っていたバスを降りる。わざわざ迎えに来てくれた羽月さんと
会場に向かう。東京駅から山手線に乗り、原宿駅へ行く。

代々木体育館は熱気に包まれ、外には大勢の人が歩いていた。
薄暗い雨雲が空に集まり始め、熱を失った冷たい風が吹きつける。
僕はゆっくりと足を進めた。深呼吸をした。
頭のなかでは演奏が始まっている。
彼らはすぐそこにいるのだ。いつもうまく実感できない。

チケットの半券が切り取られ、持ち物チェックを受ける。
ゲートをくぐる。たくさんの人がうずまいている。




自分の席を探それに座ることなく、ずっとステージを眺めて立っている。
見渡す限りほぼ満員で、空席はほとんど無かった。大きなライブ会場だ。

照明が落ちる。ライブが始まる。もちろん、僕は「オアシス」と叫ぶ。








Set List

1. Fuckin' In The Bushes
2. Hello
3. The Hindu Times
4. Hung In A Bad Place
5. Go Let It Out
6. Colimbia
7. Morning Glory
8. Stop Crying Your Heart Out
9. Little By Little
10. Cigarettes & Alcohol
11. Live Forever
12. Better Man
13. Wonderwall
14. Born On A Different Cloud
15. Acquiesce

~Encore~

16. Force Of Nature
17. Don't Look Back In Anger
18. Some Might Say
19. My Generation

end. Champagne Supernova







背後に立ち並ぶスクリーンには、さまざまな映像が浮かんでいく。
リアムギャラガーはとても気持ち良く歌っているように見えた。
フジロック、MTVとスタンディングばかりを体験してきたので、
座席があるということにかなりの違和感を覚える。
アリーナ中央に位置しているので、ステージからもやや遠い。

しかし、オアシスはそこにいた。それだけで十分だった。
僕はステージ左右にある巨大スクリーンには目もくれず、
生身の彼らを凝視する。

表情はもちろん、おおまかな動きでしか分からない。
それでもかまわない、と僕は思う。





新曲である、「The hindu times」「Hung in a bad place」もいいが、
やはり昔からのファンである僕としては、「Morning Glory」「Live Forever」に形に出来ない感動を覚える。
そして初めてライブに行ったときの興奮がよみがえる「Go let it out!」


声が枯れかけていても合唱する。
会場のノリが悪いとか、そういったことも関係ない。
リアムやノエルと一緒に歌い続ける。








今日の選曲のなかで何が一番かと問われたら、ぼくは「Wonderwall」と答える。
あれだけノエルはライブではもうやらないと宣言していたのに、
しっかりアレンジ加えて、アコースティックニューバージョンで披露されたのだった。

薄暗い代々木体育館のステージでは、ノエルギャラガーが薄明かりのなかで
アコースティックギターを抱えている。始まるイントロは、あの曲だ。
「Wonderwall」がスロウテンポで弾かれていく。ざわめいていた客は
気が付くと大きな歓声をあげていた。

その優しいキターの音色に、ノエルの歌声が絡まっていく。

一緒に歌おうとするが、微妙に合わない。
僕はあきらめて、静かに聴くことにする。
感激なのだろうか。もっと違う深い感情がぼくのなかで起こっていることに気づく。
「Wonderwall」が終わると、盛大な拍手に包まれる。ノエルは少しだけ笑う。










鳴り止まないままに、バンドが元の形を組み、「Born On A Different Cloud」



「My Generation」の叩きつけるような音でアンコールのラストを締める。
アランが叩くドラムの音は空気を伝わってびりびりと響いた。
ラストソング。
やがてリアムは歌うことをやめて去ってしまう。
僕はオアシスコールを続けながら、呆然とした気持ちで見つめていた。
そして、ステージからは誰も居なくなる。










暗くなったステージに光がわずかずつ集まっていく。
Champagne Super Novaがエンドロールで流れる。
ほとんどの人が帰らない。始まりの波の音が終わり、リアムの透明なボーカルが入る。
僕はこの嬉しい演出に感動しながら、合わせて歌う。
アリーナの前方では、両手を揺らしながら歌い、ライブの余韻に浸っているまとまった人々もいた。

「Some day you will find me

Caught beneath the landslide in a champagne supernova」
















「in the sky some day you will find me Caught beneath the landslide,,,,,,,」




部屋のなかでこのレポートを書いている僕は
傾いたヘッドホンの位置を少しなおし、飽きもせず「Champagne Supernova」を聴く。
温かい紅茶をストレートで飲み、タバコに火をつける。
白い煙が天井の蛍光灯に向かって、ゆっくりとのぼっていく。
そして僕は「Wonderwall」をリピートする。コホン、という咳の音、
それからどこか寂しげなギター、リアムの透明な声。
彩っていく彼らの歌。僕は代々木体育館の眩しい光景を思い起こす。

部屋のなかに散らばっているオアシスのCDケースを拾う。
僕は「Heathen chemistry」をセットして、あらためて「The Hindu Times」から再生する。

ライブ直後に聴いたその曲は、違った角度の響き方で僕の中に入ってくる。
温かみが熱と変わり、リアムギャラガーの声が深い色となっている。















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