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輝かしい始まり




ロックスターの人生は一般的に起伏が激しい。オアシスとしても例外ではなかった。
90年代最大の肯定、Morining Gloryという奇跡的なアルバムであっという間に頂点に登った
次の瞬間にオアシスは自己を失った。
次のアルバムではセールスを大幅に減らし、精神的には苦境に立たされ解散の危機が何度も彼らを襲った。
それは誰が見てもひどい状態だったし、バンドを続けていくことすら難しいように思えた。


世界中のマスメディアの結論はこうだった。オアシスは終わった、と。






オアシスは非常に長いあいだ、自ら創り出した大きな功績と無意識に立ち向かっていたのかもしれない。
Morinig Gloryは彼らを一瞬のうちに成功と喜びと伝説の渦中に放り込み、
ネブワースという頂点を境にして、わずか数年で彼らを失意と落胆と衰退へ流し込んだ。
ボーンヘッドとギグジーが突如として脱退宣言をし、
満を持してリリースした「Standing On The Soulder Of Giants」
新進気鋭のトラヴィスの「The Man Who」にUKチャート1位をわずか2週間で奪われ、瞬く間に圏外へ消えていった。
世界は、ノエルギャラガーの思惑とはかけ離れて動いていった。




だが、ぼくはオアシスというバンドを信じていた。
リアムはいつだって歌い続けていたし、ノエルはどうにかして新しい試みを成功させようと努力しているように思えた。

世間的な評価というものを超えて、ぼくの耳には彼らの曲が心に温かく響き続けた。
シャープな切れ味のGo Let It Out!。荘厳なゴスペル調のRoll It Over。
ノエルボーカルの甘い歌声で彩られるSunday Morning Call。どれをとっても傑作である。

他のバンドでは創れない個性がある。
そして、このバンドには希有のロックンロールスターが居る。
リアム・ギャラガーがいる限り、また何かをやらかしてくれるに決まっている。
ぼくはまるで自分のことのように、彼らの将来を考えたものだった。


当時、ぼくはまだ二十歳になったぐらいで、若かったせいもあってか自分自身にいつも自信を持つことができなかった。
いったいこの広い世の中のどこに中心点を据えて生きていったら良いのか分からなかった。
自分の価値観と社会の価値観とのあいだで常に苦しんでいた時期もあった。

その中間的な過渡期に、リアムが与えてくれたものは計り知れないし、うまく言葉で表すこともできない。
幾度となく彼の歌声を耳に入れて、歌詞カードを眺めて、夜中になったらヘッドフォンで大きな音を聴いた。


Supersonicの単純明快なメッセージ。
「俺は俺自身である必要がある。だって、他の誰にもなれはしないのだから」
 その通りだ、と若いぼくは共感する。まったくその通りなのに、その通りにいかない自分を深く見つめる。
ぼくは来る日も来る日もオアシスを聴くようになっていた。




The Hindu Timesを初めて聴いたとき、ぼくは正直に言ってがっかりした。
新曲を聴いたときの熱や高揚感はやって来るものの、どこかで奇妙な距離感があった。
歌詞も良かったし、とても良い曲だ。
しかし、リアムの声はとても低かった。かすれた歌声。。
彼の繊細さや情緒性の象徴だった高いキーが出ていなかった。
アルバム「Heathen Chemistry」でも当然同じだった。
野太く迫力があるものの欠けた声だった。
そこには以前確かにあった魅惑的要素がなくなっていた。
声質が変わってしまった。それも決定的に。
リアム・ギャラガーのその低い声を聴いているうちに、
ふっつりとぼくのなかで何かが音を立てて壊れていった。
その声に耳を傾けていると、まるで自分のことのように痛みを覚えた。



ひとつの時代が終わったんだ、ということが僕の頭によぎった。



 三年の月日が流れる。オアシスは長い空白を経て、再び動きだした。
新しいメンバーによる新しい歌、そして復活したリアム・ギャラガーの声をひっさげて、
シングル「Lyla」を発表した。
単調なリズムと純粋性。
初対面としてはあっけない印象だった「Lyla」はある水位を超えると
力みなぎる角度で心に響き出し、やがていつまでも頭のなかで鳴り続ける。
先行シングルのなかには、ゲムとリアムの作詞曲がB面で放り込まれていた。
そしてリアムがすべて歌っていた。まるで全盛期のような透明な歌声も披露していた。


僕は驚いてしまった。リアムにいったい何が起こったのだろう。
まったく美しい歌声だった。



先行シングル、「Lyla」で、リアムは新しい声で真新しい歌を存分に歌い上げている。
そこには、兄、ノエル・ギャラガーの甘い歌声は存在しない。
「俺たちは、とうとううまく飛び立つことができたんだ」とノエルは伝えたかったのかもしれない。
もちろんその出発点となる鮮やかなまでの光は、希代のロックンロールスターが放っていた。


そのシングルを何度も聴いていくうちに、
再び彼らに希望を抱いているぼくが居ることに気がつく。
もちろん、自分自身のことのように誇らしくなっているぼくがそこにはいた。



新しい伝説、幕開け。色々な言葉が昂ぶる感情とともに浮かび上がってくる。












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